自分の頭で考える読書
こんにちは、くすりやです。
読書をする意義として
今抱えている悩みを解消したい
と問題解決のために関連する本を読まれる方は多いと思います。
ただし、状況はひとそれぞれですので自分の問題と100%合致する本と出会うのは難しいでしょう。
そこで重要となってくるのが、「懐疑」と「抽象化」、そして「具体化」する能力となります。
つまり筆者が書いていることをただ鵜呑みにするのではなく、本に書かれていることを自分の悩みに落とし込み、考察・意見とすり合わせることで問題解決に活用できるようになります。
今回紹介する書籍は
「本とどう付き合っていくのか?」
というテーマを6つの観点でまとめた1冊になっています。
変化の時代に、道が拓かれる「本の読み方」
著者:荒木 弘行
出版社:日本実業出版社
本書の中で読書に対する姿勢について著者は以下の通り述べています
この本のタイトルは『自分の頭で考える読書』です。このタイトルは、「他人の頭で考える読書」をしてしまうことに対する警句です。
はじめに ~本との付き合い方~ より
私自身、本を読むにあたっては自分なりの考えを持つよう心掛けていましたが「自分の頭で考える」と言う点でハッとさせられました。
本書はいわゆる「速読」や「効果的な読書術」などのメソッドを紹介しているわけではありません。
しかし、「本を通じて楽しく、学び続ける方法」について学ぶことができます。
6つのポイントを前編後編2回に分けて紹介いたしますので一緒に見ていきましょう。
抽象化できなければ・・・
本書の中で「ホチキス担当者の悲劇」という例え話がでてきます。
内容としては抽象化できず、手段に固執してしまった一例となります。
かつて紙が主流だった時代に、資料を読みやすくするためにホチキスをひたすら打つ仕事がありました。
紙が必要な時代は成立していたでしょう。
しかしながら、現代はペーパーレス化、電子書籍化が進みホチキスを打つ仕事の需要はなくなってしまいました。
「昔はこれでよかったのに・・・」
という決まり文句は正にこの話を象徴しているように思えます。
もし、自分の仕事の本誌鵜を「紙をホチキスで留めること」という具体レイヤーではなく、「他者に対して情報をわかりやすく流通させること」と抽象化した意味付けができていれば、時代に即した連続的な変化が出来ていたはずです。
序章 変化の時代、「終身エンタメチャレンジ」の扉を開けよう より
環境と手段は本来セットであり、環境が変われば手段も変えなければ変化に対応できなくなってしまいます。
特に今はAIや技術の進歩により、多くの職が失われることが危惧されています。
しかしこれは、必要とされる仕事が入れ替わっているに過ぎないので、仕事が失われるだけでなく新しい仕事の出現もするでしょう。
例えば私は薬剤師として働いていますが、その役割を抽象化すると
患者に正しく薬を使ってもらおう!!
となります。
これを具体的に言うと
処方箋を持参した患者に対して医師から処方された薬を正しい用法用量で調剤し、患者へ服薬指導を行い交付する
と言い換えられます。
現在は、コロナ禍の影響もあり、オンライン診療やオンライン服薬指導、電子処方箋の法整備も急速に進められました。(2023年7月の時点で既に利用可能となっています)
そうすると、従来の「処方箋を持参する」という過程が必須ではなくなります。
そのため、対面でのやり取りが常識的に行われてきた中でビデオ通話による服薬指導という新しい手段が登場しました。
とは言え、
患者に正しく薬を使ってもらおう!!
という役割そのものに変わりはないわけです。
常に今、目の前にある具体的なものを抽象化し続けること。
序章 変化の時代、「終身エンタメチャレンジ」の扉を開けよう より
仕事の役割の本質は忘れずに時代や環境に合わせて手段を考えていくために、「具体的なもの」を「抽象化」することは「本質的な意味」を捉えるために大事なことと言えるでしょう。
なぜ今、本なのか
まず、私が考える本の最大の魅力というのは、やや逆説的ですが、「魅力的ではない」という点にあります。
ここで言う「魅力的」ということの意味は、短時間で効率的に情報を吸収できることです。
第1章 なぜ今、本なのか より
メディアによる情報量の違い
私たちは情報収集においても効率化を求めてしまいます。
昔と違って料理にしても日曜大工にしても本を読むよりもYouTubeなどの動画を見た方が早いですからね。
動画では映像と音声もあわせての情報となるので自然と情報量も多くなりますが、その反面自分で考える余裕がなくなっていまいます。
本では文字や図表から書いてあることの意図を読み取らなければならないので、動画に比べて情報量が少なくなる分、考える「余白」が生まれます。
本が持つ余白
余白こそが、読書の最大の魅力です
第1章 なぜ今、本なのか より
余白がある分そのスキマを埋めるために自分の経験や知識を使い、その意味を解釈することができます。
つまり、受け身の姿勢でいては本を通じて著者が伝えたいことを読み取れなくなってしまうので本に向かうとき、自分の経験や知識をどう活用できるかを考えるということも重要となります。
また、経験や知識はひとそれぞれ異なるので解釈は自由なものです。
レビューなどでイマイチな評価がついていても、自分がいいと思えた本に対して魅力を感じられるのも本の魅力といえるでしょう。
どんな本を選ぶのか
たいていの本には、「問い」とそれに対応する「答え」が存在します。明確にそれらが定義されていなかったり、著者自身がそれらの存在を意識していない場合もありますが、抽象度を上げてみれば、その作品の根底に流れているその構造を読み取ることができます。
第2章 どんな本を選ぶのか より
「問い」と「答え」による分類
ストーリー性でいえば
目的 = 問い
結果 = 答え
と言い換えることができるかもしれません。
本書ではその本が提示する「問い」について以下のように分類しています。
問いの発見 「問い」自体が今まで考えたこともないあたらしいものだった
答えの発見 既存の「問い」に対して、新たな解答だった
既知のリマインド 既存の「問い」に対して、既存の「答え」だった
問いの発見
問いの発見は今まで経験したことのなかったあるいは認知の及ばない世界の発見と言えます。
新しい「問い」に向かい合い考えるからこそ、内容によっては自分の価値観が大きく揺さぶられるかもしれませんが、次のステージへ進むために有効な発見と言えます。
ただし、こういった本では今までの経験が通用しない、つまり想像以上の負荷がかかるので、余裕があるときやじっくり腰を据えて読める状況で読むのがいいでしょう。
答えの発見
答えの発見は既存の「問い」に対して、違う視点での発見と言えます。
自分が既に「問い」を意識していてそれに対する「答え」も持っている状況で違う視点での「答え」を得ることは大きな驚きとなります。
いわゆる、
その手があったか!
というパターンですね。
料理の時短レシピ本などの効率化をテーマにした本で多く見られるでしょう。
既知のリマインド
既知のリマインドは文字通り既存の「問い」と既存の「答え」の再確認と言えます。
新しい発見がないのであれば読む必要はないのではないか?
と、思われた方は少し考えてみてください。
既知のリマインドの目的は
「わかっていながら、できないこと」をリマインドする
この一点にあります。
古典や歴史的ベストセラーと言われる自己啓発本は今も世界中で読まれ続けています。
代表的なもので言えば孫氏やアドラー、カーネギーなどの書籍がありますが、書いてあることはいずれも時代が変わっても通用するものばかりです。
それはなぜかと言うと
わかっていながら、忘れる
わかっていながら、できていない
だからです。
「他者に貢献する」、「目を見てきちんと挨拶をする」、「名前で呼ぶ」など一見すると当たり前のようなことでも意外と疎かになっているということはないでしょうか?
それを忘れないために定期的に既知のリマインドが必要になります。
よい「問い」に向き合う時間を大切にしよう
さて、この3種類のカテゴリーの本でポートフォリオを組む際の注意点をひとつお伝えしておきます。それは、決して読んだ冊数を意識しないこと。
第2章 どんな本を選ぶのか より
これら3種類の分類を難易度で並べると
問いの発見>答えの発見>既知のリマインド
となります。
当然、読むのにかかる時間も同様の並びとなるでしょう。
本を読んだ冊数や効率ばかりに考えがいって、「新たな問い」や「新たな答え」を避けるようになると成長も鈍化していまいます。
多くの本を読むこと自体は素晴らしいことなので本の分類を踏まえてこの3種類の分類でポートフォリオを組むといいでしょう。
変化に備え応用を効かせたい・・・「問いの発見」のカテゴリーを増やして視野を広げる。
目の前の仕事を習熟したい・・・「答えの発見」のカテゴリーを増やして知識を深める。
現状に迷いが生じて軸を見失いそう・・・「既知のリマインド」のカテゴリーを増やして足固めをする。
本を通して「問い」を育てる
「本の読み方」について、本章では2つのメッセージを提示します。それは、「アウトプットからはじめる」ということと、「具体と抽象の間を三角跳びすること」です。
第3章 本を通して「問い」を育てる より
・インプットとアウトプットの逆転
通常、インプットをしてからアウトプットをする、という順序で考える方が多いです。
そうなると、「まだ充分なインプットが出来ていないから」という理由でアウトプットを躊躇ってしまい、インプット過多に陥ってしまいます。
いわゆるノウハウコレクターと呼ばれる状況ですね。
これを避けるために、先にアウトプットの場を決めておき、自分を逃げ場がない状況に追い込むことでモチベーション維持につなげられるでしょう。
アウトプットの場としては、勉強会の開催、上司・同僚への報告あるいはSNSでの発信など自分のやりやすい方法を選ぶといいです。
当ブログでは以前、アウトプットについての記事も紹介しておりますのでご参照ください。
本質的な共通点をみつける
当たり前のことですが、本からの引用をそのまま語るだけでは、そのメッセージがしっかり届きません。なぜならば、その質問者と本の内容は完全にシチュエーションが一致するわけではないからです。
第3章 本を通して「問い」を育てる より
例えばこれから
起業しよう!
と考える人の悩みに対して既に成熟している経営者の成功談を伝えても立っているステージが違うのでそのまま使えせんよね?
そのギャップを埋めるために質問者が置かれたシチュエーションと本のメッセージの「本質的な共通点」を見つけることが必要になります。
この例でいえば、社員を導いていくリーダーシップや生産性を高めるためのコミュニケーションといった共通点を見出すことができます。
一見すると異なる事象の間に「航路」を通すこと
第3章 本を通して「問い」を育てる より
本書ではこのように表現しています。
言うなれば自分の「問いの抽象度」と本の「答えの抽象度」を高めることで道をつなげることです。
色々な事象(様々な本のジャンル)に航路を通すことができれば、応用力も備わり自分の世界を広げることができるでしょう。
ラストワンマイル問題を乗り越えろ
さて、本との航路を通すことができれば次の課題は「具体化」することです。
著者はこの課題を「読書のワンマイル問題」と表現しています。
例えば上司とのコミュニケーションで悩んでいる方がその悩みを解決するために本を探していたとしましょう。
ちなみに「ラストワンマイル」というのは最終的に顧客の手元まで商品やサービスを届ける行為のことです。
つまり、自分の「問い」を抽象化できたとしても、本からの答えはその人が置かれたシチュエーションと合致するわけではないので自分で考えて手元に引き寄せなくてはならないのです。
そのためには、「問い」を具体的にして、自分にとっての意味を考え抜くしかありません。
具体と抽象の三角跳び
このように具体を抽象化してから再び具体化することで一見関係ない点同士でも新たな関係性を見出すことができるのです。
著者はこのプロセスを「具体と抽象の三角跳び」と表現しています
もしも抽象化せずに具体的な「問い」で考えをやめてしまっては同じところをぐるぐると回り続けてしまい、新たな「問い」、「答え」にたどり着くことは困難になるでしょう。
例えば
上司とのどうしたら上司とコミュニケーションを取れるだろうか?
という具体的な問いに悩んでいる人が、相互理解について論じられた哲学書といった抽象化されたものを読むことで、
どうしたら他者の情報を日常的に把握することができるのか?
という具体的な「問い」に変えることができます。
このように具体と抽象の三角跳びを行うことで「本」とともに「問い」を育てていくことができるようになります。
まとめ
今回は
本の余白を楽しむこと
問いと答えの構造を知ること
本の読み方
を紹介いたしました。
本に対する理解を深めるために無批判で受け身な姿勢ではなく、自分で考える、すなわち抽象化と具体化を行い「問い」を育てていくことが重要となります。
次の記事では
- 読書の病
- 読書が役に立つ
- 本を読む
これら残りの3つのポイントを紹介いたします。
それではまた次の記事でお会いしましょう!
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